上高地を学ぶ

昆虫図鑑

概説

オオイチモンジ

 上高地から梓川の源流部にかけての北アルプス一帯は、かつて本州で高山蝶といわれる9種類がすべて分布することで知られていた。このうち、ミヤマモンキチョウ、タカネヒカゲなどは高山帯まで登らなければ見ることができない。しかし、オオイチモンジはドロノキの多い上高地はむかしから多産地として知られ、クモマツマキチョウやベニヒカゲなどもときに見ることができる。これらを含めて、上高地でこれまでに記録されたチョウは、約60種である。ただ、ミヤマシロチョウはかつて小梨平が多産地として有名であったが、現在では見ることができなくなった。高山蝶以外では、夏期コヒオドシや各種のヒョウモン類の多いのが目につく。
 トンボについては、幼虫の生息に適した水域が少ないため、上高地から今までに記録されたのは19種であり、種類が多いとはいえない。夏の上高地で目につくトンボは、低地から飛来して夏を過ごすアキアカネをはじめ、数種類に過ぎない。しかし、田代湿原などの湿地には、本州では高地の湿原に飛び飛びに分布しているルリボシヤンマ、カオジロトンボ、ムツアカネなどが生息しているのが注目される。このうち、ルリボシヤンマは田代湿原をはじめ、各所の小湿地に普通に見られる。