上高地を学ぶ

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上高地の地形と地質

概説:上高地を囲む山々

焼岳上空から見た上高地・穂高岳
上高地と周辺地域の概要

北アルプス南部の景勝地「上高地」は、1万2千年前に焼岳火山群白谷山火山の噴火でできた巨大な堰止湖(せきとめこ)の湖底にたい積物が積み重なり、埋め立てたことできた平坦な地形である。
こうした「上高地」の平坦さと、背後にそびえる山との対照の妙が、「上高地」の魅力の大きな要素であろう。
河童橋に立つと南西に焼岳、北に穂高連峰、南東に六百山、南に霞沢岳などを見ることができる。梓川を上流にたどれば蝶ヶ岳、常念岳、槍ヶ岳なども眺望できる。森林限界を超えるこうした高山の峰々と梓川清流の広々とした河床のコントラストは上高地の印象をより強烈なものにしている。

概説:地形

釜ケ淵(V字谷の渓谷)
焼岳上空から見た上高地・穂高岳

松本方面から梓川(あずさがわ)をさかのぼると、釜トンネル(かまとんねる)までは峡谷や急流地形が印象的である。ところが釜トンネルを抜けて上流側を見ると、谷が急に開けて緩やかな河床に変わる。両地域の平均河床勾配は、湯川渡(ゆがわど)~釜トンネルでは55/1,000(1,000mごとに標高が55m上がる)、大正池~横尾では 9.5/1,000である。
山間部には珍しい幅広い平坦な山間盆地に加えて、上高地には河岸段丘の発達がないことも特徴である。梓川をさらに上流に行くと、本流に運び出された大量の土砂が広い河原にたい積している様子を横尾まで観察できる。その間には大正池、田代池、明神池がある。

概説:地質

S字状ルンゼから上高地を見る(梓川下流方向)
大正池と焼岳
焼岳東山麓の土石流堆積物
梓川と穂高岳

大正池から河童橋を経て横尾までの上高地の盆地に堆積した土砂は、大正池の西側では焼岳東山麓の泥流たい積物や土石流たい積物から、また河童橋から上流側では奥又白谷や岳沢などの支流と梓川(あずさがわ)の合流部の扇状地をつくった土石流たい積物から構成されている。梓川本流沿いには、礫(れき)や砂を主体とする河川たい積物が分布している。
これらのたい積物の時代はいずれも古梓川の堰き止めが生じた1万2千年よりも新しい。たい積物の厚さは、盆地中心部の梓川沿いで300mから両側の急な斜面勾配から考えると、新しいたい積物は薄く、底は浅い。

概説:大地の歴史

奥穂高岳山頂付近から見た上高地・焼岳
昭和初期の大正池
1962(昭和37)年に起きた焼岳の火山噴火
 

上高地の平坦な盆地地形がどのようにしてつくられたについては諸説有り、長い間未解決の問題であった。
2009年に信州大学が大正池西側で掘削した300深のボーリング調査などによって、1万2千年前まで河川(古梓川)は、現在の焼岳の南(白谷山付近)を通って、岐阜県の高原川(たかはらがわ)方向に流下していたことが判明した。
1万2千年前には白谷山火山が噴火して古梓川をせき止め、長さ12km幅2kmに達する巨大せき止め湖が出現した。流路をふさがれた古梓川は、霞沢岳と安房山の間の最低鞍部からあふれ出し、安曇野(あずみの)方向に流路を変えた。上高地の平坦な盆地は巨大せき止め湖が河川によって運ばれてくる土砂によって埋め立てられてできた地形である。

概説:河原の石

梓川と河原の石
梓川の大正池上流における礫種の構成比

河童橋から梓川を見ると、大小さまざまな丸味を帯びた白色・黒色・赤色など、いろいろな大きさ・形・色の石が観察できる。川は、流域の地層や岩石を侵食してできた石や砂などを下流へ運んでいる。河原の石は、上流の山の地層や岩石を代表している標本のようなものであり、上高地や周囲の山の生い立ちを知る手がかりになる。